少し旧聞に属しますが、2009年10月9日の新聞各紙の社会面(特に朝日新聞では紙面の半分くらい使用)によれば、英国人が社長を務めるデータ分析会社が、独自に開発した競馬予想プログラムで得た競馬の配当金を3年で160億円隠していたとして脱税容疑で査察されたとの事。事実とすれば非常な驚きです。脱税は許しがたい行為ですが、この事件の特異な事は、直接の被害者が出ていない事です。競馬商材、インチキ競馬ソフトのマルチ等は詐欺であり多数の直接的被害者いる事件とは趣を異にしています。何れにしましても、脱法行為と言う負の側面はありますが、今は削除されているデータ分析会社のHPを読んだ限りに於いては、その方法論を考察する価値は有りそうです。
一般に日本では高度な数学的アプローチによるギャンブルの必勝法は邪道と見なされているようです。しかし欧米では、一つはブックメーカーの存在があるのと、馬券市場を金融市場のミニ版として研究対象とされているようです。従って、競馬必勝法の研究は大学レベルでも数多く行われ、論文も数多く発表されています。中でも、D,B Hausch(行動経済学の世界的権威)監修の”EFFICIENCY OF RACETRACK BETTING MARKETS 2008 Edition”には主に1970年代から最近までの競馬必勝理論がこれでもかと言う数で収録されています。件のデータ分析会社はHPのレベルからすれば、この本の論文には精通している筈です。因みに出版社であるWorld Scintific社は多くのノーベル賞受賞者が論文を寄せています。最近の例ではノーベル物理学賞の南部先生、化学賞の下村先生などですが、この出版社の凄いところはノーベル賞受賞の遥か前に論文が掲載されている事です。
本書の中の論文で注目されるのは”SEARCHING FOR POSITIVE RETURNS AT THE TRACK: A MULTINOMIAL LOGIT MODEL FOR HANDICAPPING HORSE RACES”の中で用いられている一般化線形モデルの一つである多項ロジットモデルは面白そうです。そして、そのモデルの改良版として発表された”STIL SEARCHING FOR POSITIVE RETURNS AT THE TRACK:EMPIRICAL RESULTS FROM 2,000 HONG KONG RACES”では20%以上の超過利益が期待できるとされています。件のデータ分析会社の本社は香港に存在するとされていますので、まずこの論文を読んでいる可能性は非常に高いと思われます。
今後、私の数量化理論と重ね合わせ、日本の実際のレースで検証してみたいと思います。最後にオッズ解析によりオッズの歪みを見つけ出そうとするオッズ解析は多分間違いです。最後の論文で a 20-variable pure fundamental multinomial logit modelと表現しているのは各馬の真の能力(勝率)を求める事を要請していますので株価のチャート分析のようにオッズの時系列の特異点解析ではないようです。また、論文のどこだかわすれましたが、小数サンプルのアノマリーにも触れられており、熟読する価値は有りそうです。


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