陰謀説はさておき、前記事の検定は有る意味正しく無いと言えます。統計学は往々にして難しい言葉を使い、もっともらしい体裁を装いますが、よく考えてみるとおかしな事が多いのも事実です。武豊騎手の成績が去年より低下している事は明白ですが、成績の低下が武豊騎手自身の馬を速く走らせる能力の低下によるものとは決して言えません。即ち、エージェントのせいかどうかは別として、騎乗している今年の馬の能力が全体的に低い事により低下したとも十分考えられます。競馬を予想する観点から考えると騎手の能力と競走馬の能力を切り分ける事が重要です。従って、検証対象とした勝率は予想には殆ど役に立たないと言えます。
*勝率に関するリンク
阪神タイガースは何故優勝したか、薬物のお話(背景の同一性確保)、お医者さんと患者さんを盲目にする、千兆分の一、一兆円の無駄使い、競馬予想に勝率・連対率は役に立たないなど参照頂ければと思います。
ところで、騎手の能力と競走馬の能力を切り分けて評価する事は簡単そうで実は非常に難しい事です。過去色々調べて見ましたが、理論的なレベルで納得できるものは有りませんでした。そこで速度(km/hr)を能力値として目的関数にすれば、騎手と競走馬の能力を切り分けられるとして考えたのが速度理論でした。そして、その数的解析手段として使用したのが数量化1類と言う多変量解析手法です。数量化1類では、その特性から騎手の能力のみを取り出す事ができます。即ち、各騎手が騎乗している競走馬の能力は同一(別の言い方すれば消されている→仮想的な幻の標準馬を想定する)とされますので、純粋に騎手の技量(どれだけ速く馬を走らさせるか)を比較できる事になります。
下のグラフは、そのようにして4人の騎手の走破速度(全距離-例えば芝1600m-を走破した場合の速度)への影響速度を調べたものです。色違いの2つの棒グラフは共に3年間のデータを使用したものですが、採録期間を約半年ずらしています。即ち、右側は今年(2007年)の1月より5月を含まない3年分のデータを、左側は武豊騎手の不調が話題になった今年(2007年)の5月までを含む3年分のデータを使用しています。
結果は武豊騎手自身の能力の低下は余り見られず。特にライバル視されている岩田康誠騎手との技量の差には殆ど変化は見られません。しかし、安藤勝巳騎手に対しては影響速度の大きさが逆転しましたので、その意味では武豊騎手自身の不調があるのかも知れません。さらに、この分析の問題点としては3年と言う比較的長いスパンで騎手の能力は一定であるとの仮説を採用しています。従って、もう少し短いスパン(例えば年度毎-但し算出した影響速度の信頼度が低下するリスクが有ります)にすれば、もう少し違った結果がでるかも知れません。これからの課題として追求してみたいと思います。




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